エヴァの庵野監督からみたナウシカと巨神兵、そして宮﨑駿

風車

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以前、もののけ姫の中での、宮さん(宮﨑駿氏)が描く「神」についてお話しした。

ところで、宮さんが最初に描いた神といえば、ナウシカの巨神兵である。

「そういえば、エヴァの庵野さんが前に語ってたな」と思い出し、古い雑誌を引っぱり出してきた。

 

庵野氏といえば、宮さんの引退作「風立ちぬ」で、主人公の声優をつとめたことも記憶に新しいだろう。

いわば宮さんとは師弟関係ともいえる、庵野氏から見た「宮﨑駿」と「巨神兵」について、少しのぞいてみようと思う。

※引用は全て、雑誌「Cut」2012年8月号より

 

2つのナウシカと、庵野氏の関係

はじめに、風の谷のナウシカという作品について、そしてエヴァの監督である庵野氏が、ナウシカとどう関係あるのか。

ご存知ない人のために、ざっくりと説明しよう。

 

ナウシカは、宮さんが監督をつとめた長編アニメーション作品の、第二弾である(一作目はルパン三世カリオストロの城)。

また、ナウシカには、宮さん本人による同タイトルの原作漫画がある。当時、アニメージュという雑誌で連載していた。

この原作は完結まで全7巻あるが、アニメ映画版の制作時にはまだ、連載の途中だった。

よって、映画は漫画の2巻あたりまでのストーリーがもとになっている。

 

庵野氏は当時、映画版ナウシカであの巨神兵のシーンの原画を担当。その庵野氏が館長をつとめ、2012年に「特撮博物館」を開催した。

ここで、会場限定の短編映画として「巨神兵東京に現る」という、特撮作品を制作している。

 

この短編映画発表と、風立ちぬ声優抜擢のニュース。個人的になかなか、感慨深かったのを覚えている。

また、この一連の流れを見て「風立ちぬで引退かもしれない」と、何となく頭をよぎったのがさみしかった。

ああ、宮さんあと一本、描いてくれないかなあ。

 

圧倒的にマンガのほうが好きです

今回紹介するのは、その特撮博物館の開催にあわせて行われた、庵野氏へのインタビューである。ナウシカと宮﨑駿について、熱っぽく語る部分は必読だ。

ちなみに、この記事はインタビュアーの力量の無さがすさまじく、一周まわって逆に面白い読み物となっている。

付き合わされた庵野氏には気の毒だが、一読の価値ありだ。いまなら中古で安く手に入るだろう。

※以下、漫画版ナウシカのネタバレあり

 

自身も制作に関わった庵野氏だが、ナウシカについてはこう語っている。

ぼくがいいなと思うのは、マンガの方の巨神兵ですね。

アニメはアニメで自分が原画を担当したっていう思い出はありますけど、やっぱり圧倒的にマンガのほうが好きですね

 

やはりそうか、といった印象だ。庵野氏に限らず、巷ではナウシカについて「漫画版の方がいい」という声が大きい。

長くなるので、ここでは漫画版の内容は明かさないが、読んだ人ほぼ全員が同じ感想を抱く。

 

巨神兵=宮﨑駿の本質のひとつ

ネタバレし過ぎない言い方で、なにがそんなに凄いのか、庵野氏が語ってくれている。

『ナウシカ』の7巻は、宮崎(駿)さんの最高傑作だと思います。よくこれだけの話を作れるなあと。いや、すごいですね。

たぶん、宮崎さんの中で、何もブレーキをかけてないところがいいんですね。アニメを作る時は必ずブレーキをかけるんで、なにか物足りなさがあるんですが、マンガの『ナウシカ』にはその感じがないんですよ。

人も次々と死んでいきますし、その描写も容赦ないんですね。宮崎さんの原液がそのまま出ていていいなあと。薄まってないんですね。

(中略)宮崎さんの本質が出てるのがすごい好きですね。そのひとつが巨神兵だと思うんです。

 

一部しか紹介できず残念だが、「めっちゃ宮さんのこと好きやんけ(笑)!」と微笑ましく思う語りっぷりである。そう、宮さんの本質とは、実はそうなのだ。

作品の上辺だけをみて、聖人君子かなにかと勘違いしてもらっては困る。子どもが楽しめる、あれだけの作品を生み出しておきながら、その内面には引くぐらいドロドロしたものがあるのだ。

そして、そのひとつが巨神兵であるという。だが、ここでいう巨神兵とは、庵野氏が描いた映画版に登場するものではない。

 

宮さんの思想が出ていて良い

映画の巨神兵はただ、力の象徴でしかないんです。マンガでは裁定者なんですよね。人間が造った神というのがいいですね

そこまで人間が追い詰められた感覚を描いているというのがすごいなあと思うんです。自分たちではどうしようもなかったから、神様を造る。

それを日本で造ったっていうのがまたいいですよね。宮崎さんの思想が出ていていいですよね

 

また、こんな風にも語っている。

巨神兵というのは、『ナウシカ』という作品の中のひとつの駒でしかないんですね。思想自体を体現するためのものじゃないんですよ。

必要な要素のひとつでしかないんですね。あくまで、主人公はナウシカですから。その使い方も含めていいですよね。

 

正直、まあ少なくとも、『ナウシカ』のアニメやっているときにはこれほどの人だとは思わなかったですね。

すごい人だとは思ってはいましたけど、(中略)宮さんの力だけではないのかなと思っていました。宮さん自身の思想としてあそこまでできるのはすごいですね

 

ふむ。そろそろ、口をはさむのも申し訳なくなってきた。

 

いかがだろうか。わたしがちょこまかとレビューを書くより、よっぽど興味が湧いてくるだろう。

今よりはまだ、失うものも少なく若かった宮さんが、ノーブレーキで生み出した漫画版ナウシカ。是非読んでみてほしい。

「宮﨑駿」とは、「巨神兵」とはなんなのか、その深淵をのぞいてみてはいかがだろうか。

 

ちなみに、わたしのお気に入りはこれである。

7巻で特にいいところは、『人間が結局残せたのは音楽だけ』っていうところです。そこは本当に素晴らしいですね。

 

本当に素晴らしいですね!!大好きだわ、ナウシカも庵野さんも。以上だ。

さよならを言うのがこんなにもつらい相手がいるなんて、ぼくはなんて幸せなんだろう。さようなら!